檀君の近業について 太宰治 Guide 扉 本文 目 次 檀君の近業について  檀君の仕事の性格は、あまり人々に通じてゐない。おぼろげながら、それと察知できても、人々は何かの理由で大事をとつて、いたづらに右顧左眄し、笑ひにまぎらはし、確言を避ける風である。これでは、檀君も、やり切れぬ思ひであらう。  檀君の仕事の卓拔は、極めて明瞭である。過去未來の因果の絲を斷ち切り、純粹刹那の愛と美とを、ぴつたり正確に固定せしめようと前人未踏の修羅道である。  檀君の仕事のたくましさも、誠實も、いまに人々、痛快な程に、それと思ひ當るにちがひない。その、まことの榮光の日までは、君も、死んではいけない。  檀君の仕事は今日すでに堂々のものである。敢へて、今後を問はない。 底本:「太宰治全集11」筑摩書房    1999(平成11)年3月25日初版第1刷発行 初出:「日本浪曼派 第三巻第七号」    1937(昭和12)年9月1日発行 入力:小林繁雄 校正:阿部哲也 2011年10月12日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。