青空の梯子 原民喜 Guide 扉 本文 目 次 青空の梯子  二階の窓に桜の葉が繁って、彼は中学を休んだ。曇った朝の空が葉のむかふにあった。雀が囀った。  怠けものはさきになって困るぞ、と誰も云はないが云ふ。それがちりちりと迫った。  彼は左官になって一生懸命高い梯子を登り降りする姿を夢みた。懐中時計の字のない部分は白かった。  正午前である。空がすっかり晴れて来た。 底本:「普及版 原民喜全集第一巻」芳賀書店    1966(昭和41)年2月15日 入力:蒋龍 校正:小林繁雄 2009年6月18日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。