或る日の動物園 岸田國士 Guide 扉 本文 目 次 或る日の動物園  鷲がその威風に似ず、低脳らしい金属性の声をたてた。  支那の聖人に似てゐる駱駝が、唇をふるはせながら子供にせんべいを貰つてゐる。彼女は、それを見て、やつぱり日向ぼつこをしてゐるときが一番好きだと云つた。  火食鳥は神主。駝鳥は DEMI-MONDAINE のなれの果て。 「さけい」といふ鳥の前で、彼女はまた、「農民ね」と呟いた。  眠つてゐる獅子の檻に近く、長髪の男が、しきりに、「怒れる獅子の図」を描いてゐた。  なまめかしきは黒豹。  熊と川獺は友だちにもちたくない。 底本:「岸田國士全集20」岩波書店    1990(平成2)年3月8日発行 底本の親本:「新選岸田國士集」改造社    1930(昭和5)年2月8日発行 初出:「手帖 第一巻第二号」    1927(昭和2)年4月1日発行 入力:tatsuki 校正:門田裕志、小林繁雄 2005年10月6日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。