「街はふるさと」作者の言葉 坂口安吾 Guide 扉 本文 目 次 「街はふるさと」作者の言葉  さわやかで、明るい、静かな物語をかこう。  この物語の中の人たちは、金と女、愛と憎しみ、罪や汚れに困りぬいている。泥沼へおちてぬけでられない男もいるし、死に場所をさがす女もいる。誰か死ぬかも知れない。みんなの負うている宿命は暗いが、それは人間全部のものだろう。  街にはザワザワと無数の跫音がむれている。泥棒の跫音も、パンパンの跫音も。しかし、人間のふるさとは人間の中にしかないと分れば、生きることほど、なつかしいものはないだろう。  地獄の門をくぐりぬけて青空の下へでることもできる。ふるさとは、どこにでもあるのだ。どこも、かしこも、さわやかで、明るくて、静かなはずである。 底本:「坂口安吾全集 09」筑摩書房    1998(平成10)年10月20日初版第1刷発行 底本の親本:「読売新聞 第二六三五六号」    1950(昭和25)年5月8日 初出:「読売新聞 第二六三五六号」    1950(昭和25)年5月8日 入力:tatsuki 校正:花田泰治郎 2006年3月2日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。