「リラ」の女達 林芙美子 Guide 扉 本文 目 次 「リラ」の女達  1 もう、いゝかげん退屈しきつて、女達は雀をどりの唄をうたつてゐた。──その雀をどりの唄は、じいつと聞いてゐると、女達自身の心境を語つてゐるやうで、外の雪のけはいと一緒に、何か妙に譚めいて聞えた。  料理店リラの前の赤い自動電話の屋根の上には、もう松茸のやうに雪が深くかぶさつて淡い箱の中の光りは、一寸遠くから見ると古風な洋灯のやうにも見える。  まだ暮れたばかりなのに、綿雪が深々と降りこめて、夜更けのやうに静かだ。リラの鎧戸風な窓からは、さつきの雀をどりの唄が、まだしんみりと流れて聞えて来る。  洋灯のやうな自動電話の中には、紺の玉羅紗のオーヴァを着た中年の男が、時々疳性に耳を掻きながらさつきから、何か受話機に話しかけてゐた──時々チラチラとリラの入口を眺めながら、リラの様子を窺つてゐる風でもある。  息でくもつた電話室の外の街路は、頭を白く染めた電車や自動車が、ひつきりなしに走つて行く。「えゝツ? だから、一寸でいゝんだから出ていらつしやい、僕が行つても、いゝんだけれど、岡田なンかにみつかると厭だから‥‥判つたア?」電話の男がこんな風な事を云つて、ガチヤリと受話機をもとへもどした。偶と入口を向いたその男の顔には、美しい薄笑ひが残つてゐて、まるで少年のやうに血があがつてゐる。──男はポケットから煙草を取り出すと、ライタアで器用に火を点じた。その時、リラの緑硝子の扉が開くと羽織も着てゐない細々とした姿の女が、いまのいま雀の唄をやめて、仲間から離れて来たと云ふ風に、口のうちでありやせ、こりやせとつぶやきながら、それでも眼だけはおろおろとして出て来た。出て来ると、厚い雪の中を草履のまゝコトコトと二三軒もさきの街角の暗がりまで歩いて行く。  男は、街角に立つた女の後姿を眼にすると、煙草の火を何度も赤く呼吸させながら、電話室の重い扉を開けて、やつぱり女と一緒の方向に歩ゆんで行つた。 「寒かない?」 「いゝえ‥‥」 「直子さん、なかなか逃げ口上がうまくなつた」 「あらア、あんな厭味なこと‥‥」 「まア、何でもいゝさ、この儘どつかへ行つてしまひたいナ」 「えゝ‥‥」 「行つてもいゝ?」 「そんな無茶なことツ、駄目! 駄目ですわ、苦しむばかしですものウ‥‥」  小豆色の女の肩に、綿雪が柳の葉のやうに降りかゝつてゐる。男は帽子のまゝもう霜降りの姿で、焦々してゐるかのやうであつた。 「自動車が来てゐるンだけど‥‥」 「えゝ‥‥ぢやア、明日お供しますわ、今晩はもうお帰りンなつて、ねえ、でないと岡田さんもですけれど、お粒さんが大変なンですもの‥‥」  男はハンカチでパタパタと、女の肩の雪を払つてやりながら、いつとき女の眼を視てゐた。 「ぢやアさよなら‥‥」 「さう──さよなら、明日何時に自動車を向けたらいゝの?」 「お店の前ですと、あのウ困りますから、どつか遠くで待つてゝ下さるといゝンですけれど‥‥」 「ぢやア、新橋の駅。僕ンとこの自動車知つてるでせう?」 「えゝ──では夕方四時ごろ‥‥」  女は、急にコンコンと小さいセキをしながら、袂を口にあてた。 「風邪をひくンぢやない、ぢやア、明日きつと‥‥」  女は丁寧に腰を屈めると、小走りにもと来たリラの前へ走つて行つて、子供つぽく、男の方を振り返つて優さしくニツと笑つた。  2 銀座料理店リラの内部、また雀をどりの唄が、あつちこつちの女の唇にばらばらと残りながら、海の底のやうに静もり返つてゐた。椅子に腰をかけてゐるのは、五人の女ばかりで、客は一人もゐなかつた。ひつそり閑として、戸外の雪の気はいが、此の小さい料理店リラの中にまで、泌み透つて来てるかのやうで、女達は、いまさらふつと唄を止めてしまふのも淋し気に、冷々とした顔をしてゐた。たゞこの店で一番古いお粒だけが、南洋産のシダのやうな鉢植の蔭でウイスキーを引つかけながら、苛々と怒鳴つてゐる。 「かう甘く見えたつて、七転び以上なンだよ、一転びの苦労もなめた事がないくせに、一かどの苦労をしよつた気の女が多いンだから、全く呆れけえるだわ、ねえ、勘ちやんさうは思はないかい?」  顔の長いバアテンダーは、桃色の紙風船をふくらましながら、 「冗談云つちやアいけないよ、七転びどころか、今の世の中ア、百転びの方が多いンだぜ」 「馬鹿、何によう云つてるンだい、フゝゝお神さん転ばして風船吹いてゐなよだ」  お粒は興ざめた顔で鉢植の蔭から出て来ると、寝呆けたやうな女達の椅子の中へはひつて行つた。  女達は、お粒の変にからんだ高話をきいてゐたが、恰度、直子がふつさりとした髪の毛に綿雪をつけたまゝ這入つて来たので、そのまゝまた雀をどりの唄をつゞけるのであつた。 「お楽しみ!」 「‥‥‥‥」 「お直さんは外まで商売繁昌で、中々おうらやましい事ですよ」  お粒の尖つた物の云ひぶりだ。直子は沈黙つたまゝ壁鏡に向かひ、ハンカチで頭髪の綿雪を拭きながら、背を射てゐるお粒の眼を痛く心に感じた。 「お直さん! さつきは牧さんからのお電話でせう?」 「‥‥‥‥」 「オヤ! まア、何時お直さんは唖ンなつちやつたの?」 「それとも、私なンかには今後ものを云はないカクゴでゞもおいでなンでございますか?」  かうなると、女達も雀の唄どころではない、酔ひが程よくまはつて来たお粒を囲んで、てんでに、「まアいゝぢやないの」と止めるばかりであつた。止められれば止められるで、お粒はいつそう腹が立つて腹が立つて直子から一言でも何かいはせなければとあせつて来るのである。 「酔つぱらひの女だと思つて馬鹿にしてるの? いくらでも踏んづけて馬鹿にされませうえゝツ!」 「‥‥‥‥」 「まア、さア、粒子さん何云つてンのよオ、こんなに雪が降つて、みんなくさつてンのにさア‥‥」 「勝手にくさつてればいゝぢやないか‥‥ええツ、だいたい私を酔つぱらひだなんぞと、高をくゝつたその済ました顔が口惜しいのよ馬鹿にしてる」 「御免なさアい、そんなンぢやないのよ──さあ、レコードでもかけて賑やかにならない?」  天井には造花の蔓薔薇が、黄色いランタアンを囲んでビイドロのやうに紅く咲いてゐる。  直子は、何時か眼頭が熱くなつてゐた。 「雪のせゐよ、こんなに客もなくなつて、皆苛々してンのは‥‥」  片隅で、背丈の小さい百合子と、唇に黒子のあるせん子が、ひそひそとさゝやいてゐる。お粒は、皮張椅子に埋もれながら、もう沈黙りきつてゐる直子にはみきりをつけたのか、袂で顔をおほうて雀の唄を、間のびた声でうたひ出した。  3 「まア、随分ひどい雪だ」  唄をうたふ事も辛気くさくなつてか、せん子は扉を押して街路を見てゐる。──百合子は薬指の根元にメンソレを塗りながら指輪の固いのを抜いてゐた。 「どうしたのさア‥‥そんなことして‥‥」  百合子と仲のいゝサトミが、同じく椅子に身を寄せて、ものうげに百合子の子供のやうな手を見てゐる。 「一寸、ビックリしたつて字はどう書いたらいゝの?」  とんきやうもない大きな声で、今まで部屋の隅で手紙か何かを書いてゐた操が、百合子達の方に向つて声をかける。すると袂で顔をおほうて雀の唄をうたつてゐたお粒が、偶と立ち上つて、部屋の中を見まはした。 「ねえ、ビックリつて字知つてるウ?」 「ビックリつて、キツキヤウと書くンでせう。随分変な字きくのねえ?」  サトミが、小さい伝標に吃驚と書いて持つて行つてやつた。──部屋の中は、温いには温かつたが、妙に白けきつて、女達は、たゞ心の向くまゝに影のやうにふはふはと動いてゐた。その影のやうな女達は、このやうな静けさをめつたに持つた事がないので、かへつて誰でもいい早くはひつてくれた方が助かると云つた風な、そんな気持ちで、各々所在なげである。──その所在なげなところへ、会社員風な男達が三人、扉を押して、雪まぶれになつてはひつて来た。部屋の内部が急に活気づいて、女達は助はれたやうに、男の傍へ泳いでいつた。 「随分不景気なンだね‥‥」 「冗談いつちやアいけませんわ、これからよウ」  操が手紙をほうりつぱなしで、三人の男達のオーヴァをぬがせた。お粒は男の中の一人と見知り越しなのか、急にハスッパになつて、その男の肩に凭れ、何か耳打ちをしてゐる。 「オイ、一人だけもてるンぢや帰つてしまふぞオ」  男達は熱いタオルで顔を拭きながら、怒鳴つた。 「冗談いつちやアいけないわ、この間、中村さんに麻雀負けちやつたから、その負けたンで飲まれちやたまンないからさ、御ユウヨを願つてたところなのよオ、馬鹿々々しい。チェツだ」 「ホヽウ、それは耳よりな話だねえ、オイ少し位チヨウクワしてもえゝぞ、えゝぞ」  女達はキャツキャツと笑つた。  レコード、「ワン、キッス」のジャズがまはつてゐる。やうやく部屋の中が少しあかるくなつて来た──温く、あかるくはなつて来たが、さき程の、誰か早く這入つて来てくれゝばいゝといつた気持ちも、かうして三人の男達が這入つて来れば来たで、泳いで集つたのは一寸の間であつた。また、糸が切れたやうに、操やお粒をのぞいての女達は、バラツと四隅の椅子へ散つてしまふ。 「それで指輪返へしちやふの?」 「勿論よ、こンなものさへやれば、魂まで自由になるつて思つてる男が憎らしいのよ。昔は牛屋の女中だつて、札束を頬つぺたへ投げ返へす心意気があつたつていふぢやないのウ‥‥随分真実つくしてたの、馬鹿らしい話だわねえ」  百合子は紅くなつた薬指の指輪の跡をいたはりながら、オパルの石を、キリキリと壁でこすつてゐた。 「だつて、恋人同志の間つて、随分喰ひ違ひが多いつていふぢやアない?」 「厭だア、喰ひ違ひなンかと違ふわよ、相手はサッパリと結婚式を挙げちやつたンですものウ、私、よつぽど、その結婚式の晩を、めつちやくちやにしてやりたかつたのだけど、丁度旅費もなかつたし、あんまりキリキリしてたンで、病気になつちやつたのよウ、その気持つてなかつたわ──」 「さうでせうね、──だけど、指輪返へしたつて、何にもなりやアしない? そのひと、きつと、貴女の思ひ出に泣くことがあつてよ。そんな指輪なンか返へす位だつたら、一度出向いて行つた方がサバ〳〵しやしないかしら?──いつそのこと、そンな指輪なンか綺麗サッパリと売り払つちまつて、遊んでしまつた方が楽かも知れないことよ‥‥」  サトミは、さう云ひながらも、自分の事を考へてゐた。考へてどうにもならないことであつたが、結局は、「時の流れて行くのを見てゐるより仕方がない」と云ふ事に落ちてしまふのである。 「さうね、この指輪売つて、私、景気のいゝところへ旅行して来てもいゝわ、サトミさんも一緒に来てよウ」 「ホ‥‥‥‥そして一晩中、旅の宿屋で泣かれるンぢや、お供しない方がいゝわ」 「馬鹿ね、痛いこと云ふ奴があるか……」  二人は少女のやうにクス〳〵と笑ひあつた。──レコードが同じ唄を何度もうたつてゐる。 雲の飛ぶよな 今宵のあなた みれんげもない 別れよう‥‥  直子の好きな唄だ。男達のボックスから、お粒の疳高い声で、 「止めて頂戴よ! そんな陰気な唄ツ、何時までもしつこいのねえ」  レコードはギリ〳〵と空廻りして止まる。四隅の女達はパタ〳〵と埃を払ふやうに立ち上つた。  4 「この分ぢや随分つもるでせうねえ」  コンパクトで鼻の頭をパンパンと叩いてゐたせん子は思ひ出したやうに、そつと蓄音機のそばの直子のところへ話しかけて行つた。 「お粒さんどうかしてンのよ、気にかけない方がいゝわ。牧さんのことぢやア、随分ピリピリしてゐるらしいのね。かなひもしないくせに‥‥」  直子は薄く笑つてゐた。だが笑つてはゐるものゝ、心のうちでは何も彼も佗びしく浅ましく思へてしようがなかつた。──三人の男達は大分酔ひがまはつたらしく、時々直子の方を向いては何かヒソヒソと語りあつてゐる。 「ベッピンぢやないか」 「あれで、子供があるンだつて?」 「まるで娘だねえ、亭主が、へえ‥‥赤い方でやられてるツて口ぢやないのかい」 「未亡人だつて? そりやア可愛さうだね」  洪水のやうに湧きかへつて、時々思ひ出したやうに男達は声をひそめる。  お粒が、唇元に下品な皺を寄せて操と笑ひあつてゐた。──その汚い言葉の矢が、ハツシと直子の胸を射て来る。直子は急に胸の中が熱くなると、ゐたたまらなくなつて、足早やに扉を押してまた、雪の降つてゐる外へ出た。 「直子さん! 一寸待つてツ! 直子さんたらツ」  せん子が、直子を追つて外へ出ると、一時ワアツと笑ひ声が湧きあがつたが、すぐ花火のやうに消えてしまつて、森となつた。さすがに、森となると、何か妙にキマリの悪い思ひがして、操は子供つぽい冗談をいつては座を濁してゐた。 「随分、あのお粒つて女、意地が悪いのねえ、たまンないわ、あンなの‥‥どんなところにも悪型つてゐるものなのね。──ひとつには、あの牧さんをお直さんに取られたつて気持ちなンでせうが、根がゲスなやりくちだから──駄目なこと判りきつてツぢやないの」  百合子もサトミも、思はずお粒の方を振り返つた。 「あゝ‥‥たまンないわね、皆、同じやうな女がそろつてゐて、意張つたり、意張られたり‥‥」 「牧つてひと、何するひとなの?」 「あら、T大学の先生よウ」 「随分すつきりした人ねえ」 「お粒さん張りしたつて駄目よウ」  百合子の薬指には、また何時の間にかあのオパルの指輪がはまつてゐた。頬や髪をいらふたびに、オパルの石が、淡くキラキラと光つてゐる。  泣くだけ泣いてしまつたあとのやうに、戸外はそおッと雪がつもつてゐるきりで、空は晴れてゐた。たゞ舗道の上だけは雪が掃いてあるので、ひどく歩きよかつた。せん子は直子に寄りそつて、何時までも悲しみのをさまらない気持を、お互に感じあつてゐる。 「随分、人を馬鹿にしてるぢやないのツ、貴女がおとなしいからよウ、あンな時、何か云つてやるといゝンだのに‥‥」  直子は怒りと悲しみに体がガタ〳〵震へてゐた。 「私、今晩キリで止めようと思つてゐたところなンですの‥‥」 「まア、だつて、そんな事云はないでいらつしやいよ。皆、誰だつてあのひとに味方してる人ないんですもの──自分が随分苦労したつてこと自慢してるけれど、苦労してない証拠よ、まるで意地の悪いお女郎みたいぢやないの、元気をお出しなさいよ、元気を‥‥」  街角を曲ると、暗がりの小さな通りに、屋台や、占の提灯なぞが出てゐた。雪が止んでゐるので、いつそう寒さが耐へるのか、肩なぞはキリ〳〵と痛い。その癖二人とも羽織のない姿のまゝポク〳〵とあてもなく歩いてみたかつた。妙に、何も彼もが佗びしい気持ちであつた。 「直子さん、私、占を見て貰ひたくなつたわ。一寸待つてくれるウ」  提灯には「迷へる者来れ」と書いてあつた。──せん子はその「迷へる者来れ」の提灯の横に掌を翳ざして「私には病気の亭主と、七ツになる子供が一人あるンですが」と、云ふ話から始めてゐる。直子は、ヒイヤリとした気持ちで、青ざめて荒れてゐるせん子の掌を眺めた。  その掌は荒れてはゐたが、非常に優さしく、すなほな格構であつた。占者は、歯のない唇をキンチャクのやうに結びながら、 「まづ肉親の縁うすくして、他郷に労するといふ相だな‥‥」  せん子の掌におかれた天眼鏡は、ひどく灰つぽくくもつて、雪に濡れてゐた。 「私、子供と離れてもいゝでせうか?」 「まづ、今年いつぱいは手元を離さぬ方がよろしからう‥‥病難のおそれがある」 「此商売は長く続けていゝでせうか‥‥」 「いや、長続きはよろしくない」 「まア‥‥」 「そちらの方、ひどく剣難が出てゐるが、‥‥見てあげませうかの」  直子は急に肩をあげて、焼鳥の屋台の蔭に犬のやうに隠れた。  5 自動車は快く京浜国道を走つてゐる。  雪晴れの温かい夕方、どこからか汐の香が鼻を打つて来る。──直子はその汐の香だけで満足したかのやうに、さつきから眼を伏してゐる。 「直子さんは、いま何を考へてゐる?」 「私? 何だか子供の頃のこと偶つと思ひ出してゐます」 「子供の頃のこと、直子さんの子供の頃はどんなだつたンだらう‥‥」 「もつと、いゝ生活が、清らかな暮らしが出来るやうに考へてゐましたわ」 「さう‥‥では、いまは清らかぢやない?」 「とても濁つてゐるやうに考へる時がありますわ。おしまひには死にたくなつてしまふし──」 「馬鹿なこといつちやアいけないよ、僕達は真面目にならなくちやアいけないね」  海が見え出した。二人とも沈黙つてしまふ。だが沈黙つてゐると、二人とも何かにせきたてられるやうな気持ちであつた。  二人とも強く愛しあつてゐながら、なぜか悲しいことに、各々の家庭のことを憶つてゐた。──直子は、庭の見えない三畳の部屋で、一人で積木をしてゐる子供の姿や、眼の薄くなつた母親の事を考へてゐた。 「もう五ツにもなつたのだから? 私が田舎へ連れて帰つて、何とか育てるから、お前は良い縁でもあつたら、かたづいておくれ」  孫の相手にヨネンのない母親の言葉が、妙に心に残つてゐた。だが、こんなに愛してゐる男には、妻があるではないか。子供が二人もあつた。  また、男は男で、長い間の家庭の習性を恐ろしく考へてゐた。 「お早うございます」  二人の子供と一緒に顔を洗つて、一緒に食卓について、「行つていらつしやいまし」と云ふ妻の言葉は時計のやうに何年か狂つたことがなかつた。つゝましく清らかな生活でありながら、妙に飄々と心の中に風が吹きこむこの気持ちはどうしたことだらう。  学生時代の思ひ出、外国生活の何年間か、みんな、妻にやましくない生活であつたが、今は、我命以上にも此料理店の給仕女を愛してゐる。  いつかも妻は、自分の傍に来て、子供のことにかこつけて云つたことがあつた。 「もう、お父さんの肌の温さは、坊や、私が寄りつけない程冷たくなりましたのね」  男は偶と心が痛くなつて頭を上げた。 「直子さんしつかりしてゐて下さい」 「えゝ」  頬が涙で冷たかつた。お互ひに家庭のことが通ひすぎたからだ。 「私、あの店を止める積りでをりますの」 「さう、それはいゝ──僕が、直子さんの生活位は引き受けますよ」 「いゝえそンなこと、私、母と子供がありますもの、どんなことをしたつて働かなければ──只、あのお店は、私にはやりきれないンです」  いひやうのないヒッパクした気持ちであつた。雪解けの、公園のやうになつた波止場の前に自動車が止つた。港に碇泊してゐる船の小旗が波の音と一緒に、パタパタきつく風に鳴つてゐる。小さい犬を連れた金髪の少女が白いベンチに凭れて唄をうたつてゐたり、黒ん坊の男が呆んやり立つてゐたり。 「このまゝ二人で外国へでも行くンだといゝナ」 「色ンな美しい国が、この海続きにはあるンでせうね、一人ぽつちだつたら、そンなところへでも行けるンでせうが──この儘、一生、私、こんな暮らし方なンでせう‥‥」  6 空がカラリと晴れてゐた。  広告飛行機が雪解けの銀座の舗道に風船を撒いて飛翔してゐる。  料理店リラの前の、赤く塗りたてた自動電話で、ながいこと、ガチヤガチヤ電話をかけてゐた男があつたが、何時までたつても、思ふやうに電話がかゝらないのか、男は荒々しく扉を蹴つて、まだ軒灯もつけてゐないリラの緑硝子の奥へ這入つて行つた。まだ三時頃なのでゝもあらう、店にはミサヲと百合子と二人きりで新聞を読んでゐた。 「まア早い、岡田さんどうしたンですか?」 「どうしたつて、かうしたつて、大変なンだよ、直さんは昨夜こゝへ出てゐた?」 「いゝえ、昨日は公休を取つたンですよ。どうかしたンですか?──牧さんとどつかい行つちやつたンでせう。ぢやない?」  ミサヲも百合子も眉も顰めながら、ひどく心にかゝる風であつた。 「今朝、牧の奥さんから電話なンだ。大将昨夜たうとう帰らないンだよ。初めての事なンで奥さん吃驚しちやつたンだらう」 「まア、さうですか! 間違つた事がなきやよござんすがね」 「大丈夫だとようござんすがね」 「さうさ‥‥二人で遊山に行つてたンさと、軽くいく奴なら心配はないンだが、──おとついの晩電話でもかゝつて来た?」 「かゝつて来たやうよ──これはお粒さんの話だけど、牧さんから直さんにかゝつて来たのを間の悪いお粒さんが取り次いで、まことにおふくれなンだから、あんなに当り散らして、果てはぐでんぐでんの大の字でせう‥‥やになつちやつたわ」 「おとつひの晩さア、お粒の奴、例のやうに直さんに大当りなんでせう‥‥それがまた、とてもゲスぽくつてたまンないのよ。──ところで、岡田さん、あんたも直子さんには参つてたンでせう」 「馬鹿云つてらア‥‥だが、嫌ひな女ぢやないさ──ところでだ二人で一緒にゐるとするならば、どつちも真面目な奴だから心配だナ」 「本当に‥‥」  三人が三人とも、心配だ心配だと口の先では云つてはゐても、このまゝ二人が遠くへ走つて行つてくれた方が可憐で面白いには面白いと三人三様に考へてもゐた。‥‥そこへ、田舎大尽風に狐の毛皮をふかふかつけたコートを着て、蒼ざめた顔色のお粒が這入つて来た。 「外は温いわ」 「どうだい二日酔ひは?」 「何時の二日酔ひなのさア、毎日酔つぱらつてツから判りませんよ」  コートをぬぎ、手袋をぬぎ、呆んやりとした眼でお粒は鏡の前に立つた。 「ねえ、随分トゲトゲした顔になつちやつたわ。なまじ恋なぞすまじきものね、岡田さん、私、このごろ、ヘトヘトに自分に疲れつちまつた‥‥」  岡田はもとより、百合子もサトミも、勝気でゲスなお粒の思ひがけない優しい言葉なので、とまどひしたやうに吃驚してしまつた。だがその驚きは妙にその場の空気をセンチメンタルにしてしまつて、ひどくしんみりとした雰囲気をかもし出してゐた。 「なまじ恋なぞすまじき事か、全くだ、大地震よりこはいからねえ」  偶と、サトミは蓄音機の前に立つてレコードをめくつた。 雲の飛ぶよな 今宵のあなた みれんげもない 別れよう‥‥  お粒のきらつた唄ではあつたが、それが此場合ひどくしつくりとして、ジジ‥‥とレコードは廻転してゐる。 「だからさ時の流れを待つばかりね」  サトミが思ひ出したやうにこんな事を云ふと、お粒は鏡の中からニッコリして「さうでもしなくちや、やりきれないわ」とまるで少女のやうにすなほであつた。‥‥誰が悪いのでもない、みんな宿命なのだ、と、さう百合子もサトミの傍に歩んで行つて、香りの高い支那煙草のミュズに火を点じた。  7 ──どんなになるかもわからないけれど、まだ生きてはゐます。一度、あなたに会ひたいと思ひながら、本意なく過ぎてゐます。この儘過ぎて行く事が恐い‥‥元気でゐて下さい。──雪がすつかり溶けてしまつた日、せん子は直子からこの様な手紙を受けとつた。子供があると云ふ境遇も似てゐたし、病身な夫を持つてゐたと云ふ事も同じであつた事から、せん子にだけは、直子は何でも云へるのであろう。せん子はせん子で、直子がゐなくなると、妙に、考へる事が多くなつた。  料理店リラのこのごろは、お粒が静かになつたのと一緒に、ひどく雰囲気がめいつて見えた。  今日もまた、雀をどりの唄が、女の唇から流れて来ると、地声の大きい操が、サトミや百合子の傍で悲鳴をあげてゐる。 「こんだけの沢山の女給と云ふものが、どンなになつて行くンでせうねえ。──私、昨夜、たうとう、ホラあの男と大森へ行つちやつたのよ、笑ふ? だつて仕方がないンだもの──」  百合子は眼を円くしてゐた。  サトミは冷いセルロイドの櫛で、百合子の断髪をくしけづつてゐた手を止めた。 「私生きてゐたくないわ。誰でも相手になつてくれる人があつたら死んでしまひたい」  夜になると、それでも料理店リラの内部は女のゐるなみに賑やかになつて、カンシャク玉なんぞが客のボックスの中から弾けてゐた。 「その男と来たら×××××××と来てるぢやないの、だもンだから一晩中私をいぢめてンのよ。いつそ結婚媒介所へでも行つてマネキンになつた方がいゝ位だわ」  操は、円い眼をクリクリさせて、さとみをつかまへて離さない。取りつき場もない程、すれつからしな風に見えて、芯は気弱なのかも知れない。  誰も彼も気弱な癖して自分に塀を囲んでゐるのであつた。その塀の中から、犬のやうな虚勢でもつて、誰彼となく吠えたてゝゐるのだ、塀をとつてしまへば、誰だつて、天真な美しい花園を持つてゐるのではないか。  ジャズのレコードが、十枚もまたふえると一緒に、さくらと云ふ女と、澄子と云ふ新しい女が這入つて来た。  さくらは三度目だといつてゐたが、澄子は始めてらしく、まだ肩揚げの似合ひさうな美しい少女であつた。──料理店リラの内部もまた女が変つて行くたびに客の筋もはじからはじから違つて行つて、このごろでは学生の校歌をうたふ唄が、リラの鎧戸風な窓から漏れてゐた。 「百合子さん、指輪早く売りなさいよ、そして、一日、二人で日光へでも行かない?」このごろ、ひどく黒つぽい服装になつたサトミが、冷たげな、百合子のオパルの石を見るたびに、百合子にせびつた。百合子は百合子で、「私、早くこんなところから足が洗ひたいわ。──今ごろいつたいチップがいくらくらゐになるンでせう。まるでキモノのために働いてるやうなもンぢやないの‥‥」 「仕方なしに働いてゐるのさ」 「ところでこの指輪、二三日中に片づけちやうわ、その金で日光よか、私、男の生活してる土地へ行つて、見て来てやりたいのよツ、つきあつてくれるウ」 「まア、凄い未練だなア‥‥」 「さうさア、一生懸命惚れてたンだもの、私、お粒さんみたいに、お次の恋人なンて手軽にやアいかないし、操さんみたいに、やぶれかぶれで大森修業も勿体ないわ‥‥」 「大森修業か、うまいこと云ふわねえ、ぢやア、私が大森修業をしたらどうする、軽蔑するかな‥‥」 「馬鹿! あンたが大森修業してたら、私尊敬するわよ」  澄子が、学生に取り巻かれて唄をうたつてゐる。段々、キヨウに雰囲気に染つてゐる姿は、サトミや百合子の眼に淋しく写つた。  8 「母アちやん、もう幾つ寝ると、オルガン習はせてくれるの?」 「さうね、もう三つねんねしたら、オルガンの先生ンところへ行きませうね」 「さう‥‥お祖母ちやん嘘吐きだナ、オルガンの先生なンかみンな死ンぢまつてゐないつて云つたよウ」 「それは、竜さんが、あんまりおねだりするからよ、学校から帰つたら、おとなしくしてるの、さうしたらオルガンの先生ンところへ連れてツたげますよ」  せん子に似て、子供の唇にも可愛い黒子があつた。  バンド・セールをつけた子供の手を引いて郊外の停車場まで来ると、 「では、行つて来ますよ、お母さんをお送りしたら、自動車に気をつけて真ツ直ぐに帰るンですよ。お土産を持つて帰りますからね」 「うん‥‥」 「オヤ、どうしたの、呆やりしたりなンかして、え、竜ちやん!」 「何でもないんだよツ、お父ちやんが 淋しさうだから早く帰つてねツ」 「竜さんの馬鹿、ホッホ……あンたが淋しいンぢやない‥‥」  せん子は、胸がふくれあがりさうにうれしかつた。どんなにヒクツな、いまの生活であらうとも、耐へて行かなければならないと考へるのであつた。 「ひがんでいふンぢやないが、実際お前にとつて俺はやつかい者だね」 「まア水くさい。貴方が働けるやうになつたら、私長火鉢にをさまつて、貴方をこき使つてやらうと、今からテグスネ引いてるンぢやないのよウ‥‥」  こんなたわいのない事で慰めあひながら、笑つて涙ぐむ今の二人である。  電車の中には自分の子供と同じやうなのが、雀のやうにさへづりながら沢山乗つてゐた。父親に似て音楽の好きな子供、オルガンを習はせてくれとせびる可愛い姿を思ひ浮かべると、せん子はどんな事をしても、オルガンを習はせてやりたいと思つた。──だが、又、思ひ返してみると、理想の生活は、何時も遠く正反対の空を飛んで行つてゐる。少し位は、手も唇も許す心算でなければ、女給暮らしと云ふものは、さう収入のいゝ仕事では、今ではなくなつてゐるのだ。  と、云つて、直子のやうに、母も子供も捨てられる程、若くもない年齢である。──せん子は、ゴトゴト電車に揺られてゐながら、たゞ、いつも、呆んやりと考へに耽ることは豪壮な邸宅でもなければ、また、華美な、訪問服のことでもなかつた。子供の掌に握らせてやる、少しばかりのオルガンの月謝のことばかりで、それは、詩よりも高価で手のとゞき易い許された、何と可憐な空想であつたらう。  街は硝子のやうに寒かつたが、相変らず舗道には人が溢れてゐた。枯れた銀座の柳にも何か風情があつて、春らしかつた。もう三四ヶ月もすると、あの柳にも青い芽が出る。せん子は風呂敷の中の、コマゴマした道具の音も冷たく心に感じながらも、春を待つてゐる気持ちは、街の誰よりも強くあこがれてゐるのであつた。 「せん子さんぢやないの‥‥」 「あらア、直子さん、どうしたのさア‥‥まア、元気で」  自動電話の蔭に、支那織りの黒いコートを着た直子の手をつかんでせん子は子供のやうに息をせかせか切つてゐた。 「心配かけて済みません」 「そンなことどうだつていゝけれど、一度岡田さんが来たツきりよ、それから、あンな呆んやりしたあなたの手紙、探しやうが無いぢやありませんかツ」  二人、たつた四五日の別れであつたのに、何から話していゝか、あれもこれも、云ひたいことばかりがいつぱいであつた。──だがせん子の唇をついて出ることは、「丈夫で生きてゐてよかつたわ」といふ言葉ばかり。  9 二人はせかせかした気持で松坂屋へ這入つて行つた。いまの二人には、かへつて、このやうな雑沓のなかゞ落ちつけて話の出来る場所であつたのであらう。 「私、いま盲めつぽうなのよ‥‥只母親と子供の事を考へると切なくなつてしまふけれどねえ、人間つて、どうにもならなくなつてしまふ場合つてあるぢやないの‥‥」 「何いつてンのさア、そんな、どうにもならない場合なンてものは、自分自身がつくるンですもの‥‥子供や、お母さんの事考へたらもつとどうにかなるものよ」 「えゝ──」 「えゝぢやないわよ、大丈夫? 気が弱くつちや駄目、──牧さんの方だつて、奥さんも子供さんもいらつしやるンですもの、判るでせう?」 「えゝ」  あんなに、いつぱいあれもこれも話しがありながら、かう、つきつめて来ると、二人とも、中心よりも遠い線をもどかしくぐる〴〵廻つてゐるだけであつた。 「お粒さんはどうしてるウ?」  熱い茶をゴクリと呑み干すと、直子は白けきつた気持ちで、別の話にうつゝた。 「あのひとはあンなだもの‥‥このごろパトロンが出来て満洲へ行くとか云つてたわ──二人新らしい人が這入つて来たの知らないでせう。一人は素人だつたンだけど、このごろは結構、あの空気に染つて、はづかしツ気もなく大きな声で唄をうたつて酒を呑んでるわよ」 「まア、さうなの‥‥サトミさん達は?」 「さあ、今日あたり百合子さんと御同伴で広島の方へ行くつて云つてたけれど、──あの人達はあの人達でいゝわ。子供や亭主がないンですもの、その点、私なンぞより、よつぽど気楽で、せか〳〵しなくツていゝし」 「全くね、だけど、あのサトミさんてひと、どつか違つてる人ね、呆んやり退屈さうな風でゐて、落ちついてゐのね、私、自分は自分で、あンな酒場の空気に汚れないひと、好きだわ」 「だつて、この頃、お粒さんだつて、操さんだつてとても気弱で、そりやアいゝ人達になつたわ、だけど、操さんの大森発展は困りもンだけど、あれはあれで仕方がないぢやないの、御亭主が市ヶ谷へ這入つてンですつて佗しい話ねえ」  二人は廊下を話しながら歩いた。琴を買つてゐるお嬢さんが、コロリンシャンと、何度も糸を弾きながら母らしい人と談笑してゐる。  直子は眼を伏せて古里の事を偶と考へてゐた。柿の実の赤々と熟した娘のころの思ひ出の中に、「黒髪」がよく弾けたこと──今かうして、何でもない行きづりの琴の音を聞くとたまらない気持ちであつた。そして、妙に音楽と云ふものが、甘く心に来ると、牧と、この儘、行くところまで行つて死んでしまつてもいゝと云つた風な気持ちになるのであつた。 「何にしても、人生つて、くたびれるところなのね」 「直子さん! あンたはまだ本当にお嬢さんだわ、私、このごろでは、人生と根くらべよ──私、子供にオルガン習はせてやりたいことが理想なンだけれども‥‥えゝ一生の仕事として、それをやつてやりたいと考へてゐるのよ、私は、生きてゐることは楽しみだともこのごろ考へだしたわ」  10 雲の飛ぶよな  今宵のあなた  みれんげもない  別れよう‥‥  料理店リラの女達の中には、この唄はまだまだ唇に苔むされてゐた。  お粒は、酒にも弱くなつたのか、毎日呆んやり煙草を吸つて唄つてばかりゐた。──サトミは相変らず、底の判らない顔色でニヤニヤ笑ひながらレコードをかけてゐる。百合子は百合子で、華美な着物ばかりつくつて操達をうらやましがらせてゐた。  雪もないうららかな日が続いた夕方──静かにレコードの始つてゐるリラの扉をあけて、 「おい! とう〳〵やつたよツ! ホラツ」  せん子が第一番に、立ち上つた。岡田は震へる手つきで、マホガニの卓子の上に新聞紙をひろげた。  ──牧法学博士一女給と心中を計る。  場所は直子の郷里京都であつたが、まだハツキリした事は書いてなかつた。 「昔こゝにゐたひとなンですの‥‥まアこはいツ」  女給らしくなつた澄子が岡田の肩から覗き込んで、牧博士の写真を見てゐる。  さくらも、操も サトミも、百合子も、ドシンと墜ちたやうな顔であつたが、それよりもひどく心に耐へたのは、せん子と粒子であつたらう。 「とう〳〵やツちまつたのねえ!」  粒子は何を思つたのか、ジジ‥‥と空廻りして鳴る、雲の飛ぶよな今宵のあなたのレコードを針を変へてはいとしにさうに静かに廻し始めた。 底本:「林芙美子全集 第十五巻」文泉堂出版    1977(昭和52)年4月20日発行 ※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。 ※片仮名の拗音、促音を小書きするか否かは、底本通りとしました。 ※疑問点の修正に当たっては、「清貧の書」改造社、1933(昭和8)年5月19日発行を参照しました。 入力:林 幸雄 校正:花田泰治郎 2005年8月20日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。