旅人
三好達治


雪どけの峽の小徑を 行く行く照らしいだす わが手の燈火

黄色なる火影のうちを 疲れて歩む あはれ わが脚の影

重い靴 濡れた帽子 冷めたい耳 空腹 ──旅人と

身をなして 思ふことさへ うつつない ああ このひととき

底本:「三好達治全集第一卷」筑摩書房

   1964(昭和39)年1015日発行

入力:kompass

校正:大久保 知美

2017年1226日作成

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