鴨 一
三好達治


二羽 三羽 霧のかかつた水際に 黒い小鴨が游いでゐる

私は林の小徑を出る ──それとなし彼らはくるりと向きをかへる

やがて一羽は空に揚る 一羽は水の面を飛ぶ 一羽はあとに殘される

彼は周章てて水を打つ 水を打つ やつとからだが宙に浮く 仲間と違つた方角へ

底本:「三好達治全集第一卷」筑摩書房

   1964(昭和39)年1015日発行

入力:kompass

校正:大久保 知美

2018年928日作成

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