(名詞の扱ひに)
中原中也



名詞の扱ひに

ロヂックを忘れた象徴さ

俺の詩は


宣言と作品との関係は

有機的抽象と無機的具象との関係だ

物質名詞と印象との関係だ。


ダダ、つてんだよ

木馬、つてんだ

原始人のドモリ、でも好い


歴史は材料にはなるさ

だが問題にはならぬさ

此のダダイストには


古い作品の紹介者は

古代の棺はかういふ風だつた、なんて断り書きをする

棺の形が如何に変らうと

ダダイストが「棺」といへば

何時の時代でも「棺」として通る所に

ダダの永遠性がある

だがダダイストは、永遠性を望むが故にダダ詩を書きはせぬ

底本:「新編中原中也全集 第二巻 詩」角川書店

   2001(平成13)年430日初版発行

※底本のテキストは、著者自筆稿によります。

※()付きの表題は、作品の冒頭をとって、底本編集時に与えられたものです。

※()内の編者によるルビは省略しました。

入力:村松洋一

校正:hitsuji

2019年1227日作成

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