〔われはダルケを名乗れるものと〕
宮沢賢治



われはダルケを名乗れるものと

つめたく最後のわかれを交はし

閲覧室の三階より

白き砂をはるかにたどるこゝちにて

その地下室に下り来り

かたみに湯と水とを呑めり

そのとき瓦斯のマントルはやぶれ

焔は葱の華なせば

網膜半ば奪はれて

その洞黒く錯乱せりし

かくてぞわれはその文に

ダルケと名乗る哲人と

永久とはのわかれをなせるなり

底本:「新修宮沢賢治全集 第六巻」筑摩書房

   1980(昭和55)年215日初版第1刷発行

※〔〕付きの表題は、底本編集時におぎなわれたものです。

入力:junk

校正:土屋隆

2011年514日作成

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