蚤と蚊
夢野久作


 夏の暑い日になまけものがひるねをしておりますと、蚤と蚊が代る代るやって来て刺したり食いついたりしました。なまけ者は怒りだして、

「折角ひとが寝ているのに何だっていたずらをするのだ」

 と叱りつけました。

 蚤と蚊とは声をそろえて答えました。

「私たちはあなたのように寝ころんでいるなまけものがすきなのです。私たちに好かれないようになりたいならば、起き上ってセッセとお働きなさい」

底本:「夢野久作全集7」三一書房

   1970(昭和45)年131日第1版第1刷発行

   1992(平成4)年229日第1版第12刷発行

初出:「九州日報」

   1923(大正12)年114

※底本の解題によれば、初出時の署名は「土原耕作」です。

入力:川山隆

校正:土屋隆

2007年721日作成

青空文庫作成ファイル:

このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。