古い日記の中から
夢野久作


 俺に取って金は空気と同じものだ、何が税金だと直木が笑った。


 半年の生命を本屋へ質に置いて、本屋に葬式を出させた直木。


 逆王に這入った直木は逆に利く桂馬に頭を遣られて死んだ。


 前後から外れる直木の褌を当にしていた奴が奪い合った。


 ダメになった頭で直木が碁を打って、負けて遣った奴に葬式をさせた。


 死ぬまでは死なないと書いた稿料を一文も取らずに直木は死んだ。

底本:「夢野久作全集7」三一書房

   1970(昭和45)年131日第1版第1刷発行

   1992(平成4)年229日第1版第12刷発行

初出:「日本文芸 3巻1号」

   1936(昭和11)年1

入力:川山隆

校正:土屋隆

2007年723日作成

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