「文壇波動調」欄記事
(その二)
岸田國士


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 加宮貴一君、「光明の文学の序曲」を拝見しました。君が中村武羅夫氏に対して云つてをられることは、当然、僕としても何とか云はなければならないことらしいが、君と僕とは、所謂「明るい文学」を提唱する動機も違ふやうだから、当分口は出さないことにします。

 中村氏にも、そこを混同されないやうにお願ひして置く。(岸田)

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 ただ、僕は僕として、中村氏にこれだけのことは云つて置きたい。僕が求めてゐるのは「明るい人生」ではない。「明るい文学」なのだ。その「明るさ」は、あなたがたの云ふ「人生」の何処にもある筈はない。それはただ、「あるがままの人生」を盲信しない人間の、少しばかり光つた眼の裡にあるのだ。(岸田)

底本:「岸田國士全集20」岩波書店

   1990(平成2)年38日発行

初出:「文芸時代 第二巻第七号」

   1925(大正14)年71日発行

入力:tatsuki

校正:門田裕志、小林繁雄

2005年910日作成

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